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2020年05月02日 土曜日 「9月入学制」って、本当に今必要ですか?     ( 塾長ブログ )

新型コロナウィルスの感染拡大で、各学校が休校、再開の目途が立たない状況が続いています。学校の制度において、4月から始まる予定であった新学期が、GW明けへと一旦延期され、さらに「9月入学制」が検討されつつあります。「9月入学制」が妥当とする意見、その反対意見とありますが、乗り越えるべき課題はあるものの、総論賛成・やるなら今!というのが大勢のようです。「9月入学制」となった場合はどうなるのでしょうか。

仮に、「9月入学制」となった場合、年間スケジュールは大体こんな感じでしょうか。↓

9月 入学式・始業式・健康診断・家庭訪問
10月
11月 運動会・修学旅行
12月 球技大会・冬休み(2〜3週間程度?)
1月  冬休み(続き)
2月
3月
4月  春休み(1週間程度?)
5月  市立小学校入試 学力テスト
6月  センター試験 私立高校・中学入試
7月  卒業式・終業式 国公立大学二次試験 公立高校入試
8月  夏休み(40日程度?)

今の現状は、「9月入学制」の議論が始まったところであり、公式に発表されているスケジュールはありませんので、イメージを持ってみて頂ければと作ってみました。

海外では9月始まりが主流とはよく言われていますが、実際のところはどうなんでしょう。
9月が始まりの国は、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、ロシア、トルコ、中国、モンゴルなどです。その一方で、シンガポールは1月、韓国は3月、パナマは4月、タイは5月というように、新学期スタートの時期には国によって結構ばらつきがあります。

海外主要国の学校始まりの時期↓
1月…シンガポール
1月末〜2月初め…オーストラリア、ニュージーランド
3月…韓国
4月…パナマ
5月…タイ
6月…フィリピン
9月…アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、トルコ、モンゴル、ロシア、中国
10月…ナイジェリア、カンボジア

一概に、9月始まりがスタンダードとは言い切れないみたいです。日本の報道というのはやはり、大袈裟かもしれません💧

なのに突然、日本にとって習慣的にも文化的にも馴染みのない「9月入学制」。9月新学期に移行すると、児童生徒、学生は、みんな約半年、余分に学校に通うことになります。この半年の価値は、人それぞれですが、軽いものではないだろうと思います。ニュースでも話題になりました署名活動をした高校生のように、休校中はさまざまな活動が自粛されて残念だったから、「もう一度やり直したい」という気持ちの子もいるでしょう。気持ちはわかります。しかし、「半年も延びるのはイヤだ、当初の予定通り3月に卒業したい」という気持ちの子も当然いると思います(「この4月からの半年がムダなわけではない」という見方をする子もいるでしょう)。結局、「9月新学期制」は、こうした気持ちの子たちを我慢させ、強制的に約半年、時間的に拘束することにもなります。この影響は重く捉えたほうがよいのではないでしょうか。

又、今年から9月新学期にすると、高校生や大学生らにとっては、学費や生活費が8月まで半年分くらい余分にかかることになります。政府や大学等のほうでなにか支援策が講じられるかもしれませんが、全額補填などはないでしょうから、やはり「9月入学制」に賛成の場合、自腹をきることは覚悟しなければならなくなります。
それから、早生まれの人はどうなるのか?という疑問もあります。今、現在は「早生まれ」というと1月1日〜4月1日生まれの人を指します。同じ西暦に生まれたとしても、4月1日に生まれた人は学年が一つ早く進み、4月2日に生まれた人は一年遅いというわけです。これまで同様に「満年齢」で考えるとすると、9月2日生まれ〜翌年9月1日までが同学年ということになります(そして早生まれは6月1日〜9月1日までに生まれた人になります)。しかし、このように考えると、学年が同じだった人が違う学年になったり、重複してカリキュラムを受けたりするといったことが発生し、教育現場が混乱するのではないでしょうか。
�\称颪簀�号など暦上(の区切り)では1月1日から12月31日まで、��(会計、事業)年度は4月2日から翌年4月1日まで、�� 「9月入学制」の学年(の区切り)は9月2日生まれから翌年9月1日まで、と本当にややこしくなりそうです。
※現在の学年は、(会計、事業)年度の期間にほぼ合わせてありますから、今から突然学年が同じだった人が違う学年になったりするのは本当に大変でしょうね。

他にも考えることはあります。
日本の会計年度、事業年度は4月〜3月であり、官公庁はこれで動きます。そのため、民間企業も3月決算が多かったり、入社時期も4月なので、このあたりをどうするのか、学校の制度のみならず、幅広い議論が必要です。
必要な議論というのは…
さらに、働いていたら得られたであろう5〜6ヶ月分の給与等を失うことにもなるということです(もっと厳密に言うと、退職金などにも多少影響するが、退職の時期も後ろ倒しになるのに退職金は何も変動しない)。経済学でいう機会費用の考え方です。ラフな計算すると、いまの高校生は1学年にだいたい100万人います(高卒後進学する人も多いが、大学生等で就職する人も含めて計算します)。約100万人×20万円(初任給・月)×5〜6ヶ月とすると、日本全体で約1兆〜1.2兆円の損失である。これにプラス、学費、生活費などを加えた経済的な負担がかかることになります。

又、「9月新学期」は、社会への影響が甚大です。企業などの採用時期を見直す必要がありますが、これは時期をずらすか、通年採用などにすればよい話であるので、手間、労力はかかるとはいえ、そこまで大きなダメージだとは考えにくいです。深刻なのは、人手不足への影響です。「9月新学期」を主張する方々は、5〜6ヶ月の間は新規の労働力が約100万人分が不足するということをきちんと考えておられるのでしょうか。新型コロナの影響で未曾有の不景気になる可能性もあり、採用を絞る企業等も多いことでしょう。リストラ、雇い止めなども既に起きています。観光業に至っては厳しい状態が続きそうです。来年、再来年の3月に卒業しても、就職できない子たちもたくさん出てくるかもしれないです。
また一方で、医療崩壊が心配されているように、医療にはもっと人手を投じていく必要があるでしょう。介護、福祉、保育なども、今でも人手不足です。今年から「9月新学期」にしますと、医学部や看護学校等に通っていた学生も半年分、就職が遅れます。しかも、そうした業界へは、簡単には人の移動、転職ができません。当たり前ですが、昨日まで観光業をやっていた人が、今日から看護師や保育士ができるわけではありませんし、経済学部の学生がいきなり医療現場で従事できるわけではありません(受付などは別ですが)。「9月新学期」にすると、もともと人手不足であったこうした業界がさらに厳しくなる可能性があります。これは、ひいては医療や福祉などサービスを受ける一般の市民にも影響が及びます。
さらに問題は、この危機的状況の時期に、「9月新学期」という制度改正に文部科学省等の人的リソースを割くのが賢明と言えるのかという点です。「9月新学期」にするには、少なくとも学校教育法施行規則の改正が必要となります(下記★印参照)。それは、現行では「第五十九条 小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。」となっているからです(中学校などにも準用されています)。法律よりも改正への労力はかからないかもしれませんが(下記★印参照)、これだけ社会に大きな影響が及ぶ改正である以上、しかるべき審議や手続き(たとえば、国会への説明、中教審などでの審議、パブリックコメントなど)は必要となるでしょう。

★4/28 20:20修正・追記
 学校教育法第17条に「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。」とありますので、この規定も改正する必要があると思います。

 学校教育法施行規則のみの改正では、たとえば、今日4月28日に6歳になった子は今年の9月から小1に、9月以降に6歳になる子は翌年の9月から小1年になることになりますので、4〜8月生まれの子と、9月〜3月生まれの子が同級生ではなくなってしまいます。
こうなってきますと、少なからず、文科省の官僚をはじめ、さまざまな人々が時間と労力をこの改正に取られることになります。そのような時間があるならば、例えば、学校、家庭におけるICT環境の整備など、別の仕事をもっとしてもらったほうがよいのではないでしょうか。優先順位の問題であります。加えて、各地の教育委員会も制度改正などが必要になり、また振り回されることになります。感染防止対策や子どもたちの学びの場確保など別の政策に労力を割いてもらうほうがよいと思うのです。

「9月新学期」にはもちろん、利点、メリットもありますでしょう。私も全面的に反対ではありません。しかし、これまで述べた問題点を覆す(上回る)ほどの大きな利点と言えるでしょうか。加えて、もうひとつ考えたいことは、子どもたちの学力保障や入試での不公平の是正などを図るためには、「9月入学」のようなオオナタをふるうよりも、別の手段・方法がある、ということです。学力保障や学力格差問題について言えば、各学校は、ICTを活用したり、可能な地域はたまに分散登校にしたりして、児童生徒の学習へのやる気を高めていくこと、フィードバックをしていくことが必要だと思います。「9月入学」で問題を先送りしている場合ではないと思うのです。高校入試や大学入試について言えば、例えば、今年度だけを特例として、出題範囲を狭めたり、あるいは選択を広げたりすること(大問が6つあれば、4問から選んで解答できるようにするなど)で、休校している生徒と再開している生徒との間で、なるべく不公平が生じないようにすればよいと思います。「高校時代に自粛自粛ばかりじゃなく、もっと思い出がほしかった」というのでしたら、新型コロナが落ち着いたあと、気の合う仲間と旅に出かけてみるのもいいでしょう。「9月新学期」にならなくても、あるいは大人に頼らなくても、署名活動ができるくらい積極的な高校生なら、他にもたくさん切り開ける扉ははあると思います。

「9月入学制」は私自身は簡単な話ではないと思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

 

 

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